Kinoppyのビューアのエンジンは、.book形式のためボイジャーのT-Timeが使われる。一方、アプリ版ではモリサワのMCBookというエンジンが使われている。青空文庫ビューアでも組版のレベルには差があるが、T-TimeとMCBookの比較では、明らかにT-Timeのレベルが低い。
MCBookでは約物(記号類)が連続した時の字詰めが調整されるが、T-Timeではされない。T-Timeで「〜」のフォントが横書きのものをそのまま回転させただけなのには呆れた。書籍版に近い版面を実現しているのはMCBookである。
T-Timeが1998年に発表された時点ではハードの制約が厳しかったのかもしれないが、今になってもこんな体たらくでは情けない。
操作性ではKinoppyの方が優れている。アプリ版では文字選択が難しい。大辞林やbREADERと同様に縦になぞって文字選択できるのだが、大辞林やbREADERではほとんど一発で指定できるのに、アプリ版では一度でうまく指定できない。横にスワイプしてページ送りする際に誤って文字選択になってしまうことも多い。
アプリ版はiOSだけだが、KinoppyはPCやAndroidやソニーReaderといったマルチデバイスに対応している。
にもかかわらず、上巻をKinoppyとアプリ版の両方で読み比べてみた結果、下巻はアプリ版を購入した。書籍版と比べてお粗末な組版のT-Timeが許せなかったからだ。
Kinoppyでの表示例(フォントは秀英明朝)
アプリ版での表示例(フォントはリュウミンL)
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